相続、法人設立などお気軽にご相談ください。

ここでは遺言における基礎知識をご紹介いたします。

遺言基礎知識 -目次-

1.遺言とは
2.遺言の必要性
3.遺言でできること
4.遺言で想いを伝えるには
5.遺言の方式

1.遺言とは

自分の死後、残された財産をどのように配分するかを、亡くなられた本人が自由に決め、
その遺言者の終意を尊重して、遺言者の死後の法律関係が遺言で定められた通りに実現することを保証するという制度です。

これによって、その後遺族の無用なトラブルを事前に防ぎ、また、遺族に対して自分の想いを伝える最後のチャンスです。

遺言のメリット

・遺産分割の方法を指定しておけば、家族を相続争いの無用なトラブルから守ることができる。
・生前自分の面倒をよく見てくれた、内縁の配偶者や息子の嫁、世話になった人に財産をあげることができる。

2.遺言の必要性

ここでは、特に遺言の必要となるケースをご紹介いたします。

(ⅰ)夫婦の間に子供がいない方

遺言がないと、配偶者とともに親や兄弟姉妹が相続人となるので、配偶者に全財産を相続させることができません。

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配偶者に財産の全てを相続させる旨を遺言で記載しておけば安心です。

※ しかし、配偶者と親が相続人になる場合は親には遺留分がありますので親
から最低限の相続分を主張されるケースはあります。

(ⅱ)事業を継ぐ長男に事業用の財産を相続させたい方

遺言がないと、長男が事業用の財産を相続できるとは限らず、事業の継続が難しくなるおそれも出てきます。
例えば、会社の社長が亡くなられたとき、相続の対象は会社の株式です。相続人が複数いる場合には株式は
分散してしまうので、会社の支配権をすべて持たない後継社長が実力を発揮することは難しいです。

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各相続人が取得する財産を指定しておけば安心です。
しかし、事業承継の場合は、相続人の中に遺留分を主張できる方がいた場合は「遺言に自社株はすべて長男に譲る」
と書いても遺留分の権利が遺言よりも上です。そのため、社長に遺留分に見合った財産が自社株式以外にないと結局は自社株が分散することになります。
事業承継の場合は、事前に後継者に株式を移転しておくことをお勧め致します。

(ⅲ)長年連れ添った妻がいるが婚姻をしていない(内縁の妻がいる)方

相続人になるのは法律上の配偶者だけです。このままでは妻は遺産を相続できません。

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遺言で妻に財産を遺贈することができます。

(ⅳ)よく尽くしてくれた息子の嫁に財産をあげたい方

遺言がないと嫁は相続人ではないので相続できません。

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遺言で嫁に財産を遺贈することができます。

(ⅴ)相続人同士が不仲。(例えば、暴力をふるう息子には財産を渡したくない)

遺言がないと息子にも、他の相続人と同じように相続する権利がある。

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遺言で非行のある相続人の相続権を奪うことができる(相続人の廃除)

(ⅵ)相続人がいない方

残った財産は国のものになります。

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遺言で特定の団体に寄付したり、どのように使ってほしいかを指定したりすることができます。

ここでは、遺言の特に必要となるケースをご紹介いたしましたが、このような場合でなくても
遺言を用いて残された遺族に遺産分割の方法を指定したり、遺族に日頃伝えることができなかった想いを残すことができます。

3.遺言でできること

①相続分の指定およびその委託

法定相続分と異なる相続分を指定できます。

②遺産分割の方法の指定およびその委託

誰にどの財産を相続させるかを指定できます。

③遺産分割の禁止

死後5年以内の期間で遺産の分割を禁止できます。

④共同相続人の間の担保責任の指定

ある相続人が取得した財産に欠陥があった場合、他の共同相続人はその損失を相
続分の割合で分担しなければならないという民法の規定を変更できます。

⑤相続人の廃除及び廃除の取消

相続人の廃除または廃除の取消の意思を表示できます。

⑥特別受益の持ち戻しの免除

生前贈与を相続分に反映させない旨の意思を表示できます。

⑦遺贈

相続人または相続人以外の人に財産を遺贈できます。

⑧遺贈減殺方法の指定

遺留分を侵害する遺贈が複数ある場合に、減殺の順番や割合などを指定できます。

⑨寄附行為

財団法人の設立を目的とした寄付の意思を表示できます。

⑩子の認知

婚姻していない女性との間の子を認知することができます。

⑪未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定

自分の死亡により親族者がいなくなる未成年の子について後見人を指定できます。

⑫遺言執行者の指定およびその委託

遺言の内容を確実に実行してもらうための遺言執行者を指定できる。

⑬祭祀承継者の指定

先祖の墓や仏壇などの承継者を指定できます。

4.遺言で想いを伝えるには

遺言には「付言事項」といい本来の遺言書の中身とは関係のない遺言者の気持ち、
なぜこのような相続配分にしたかなどの経緯を記載することができます。

あなたの「想い」や「心」を遺言に記載することによって、不要なトラブルを防ぐことはもちろん、
遺言を通じて、お世話になった方への感謝の気持ちを形にしたり、現在不安に感じていることを取
り除くことができたり、残された方への未来への第一歩を作ることができます。

遺言書を作成するにあたって、「想い」や「心」を表現することに力を注ぐことにより残されたご家族
に単に財産を残すためだけでなく、輝かしい「心の書」としての遺言を残してはいかがですか。

そのうえで付言事項に記載すべきことは、あなたの人生にあります。ヒント

・ ご自身の幼少時代の出来事は?
・ ご自身の小学校、中学校、高校、大学時代の出来事は?
・ ご自身の社会人になってからの出来事は?
・ ご自身の今まで一番うれしかったこと、悲しかったことは?
・ 配偶者(夫・妻)との出会いは?
・ 配偶者との一番の思い出は?
・ 配偶者に感謝していることは?
・ 配偶者に苦労をかけたことは?
・ 子供が生まれたときの気持ちは?
・ 子供の幼少時代の出来事は?
・ 子供の小学校、中学校、高校、大学時代の出来事は?
・ 子供からもらった感動したことは?
・ 子供との一番の思い出は?
・ 子供に気付かされたことは?
・ 子供に感謝していることは?
・ 人生観
・ 遺訓・家訓
・ 人生で得た教訓
・ 家族について
・ 夫婦とは
・ 親子とは
・ 社会へのかかわり方
・ 信仰について
・ 家系や家の伝統について
・ 残された家族に望むこと     など

あなたが生きてきた人生はとても尊いものです。

そしてそこから学びえた精神的支柱はあなた自身にとっても、子孫、後世の人々にとってもとても価値あるものです。

だから、あなたが「生きた証し」を言葉にのこしていただきたいと思います。
あなたがいつも思っていることを素直に綴りましょう。

それが、残された家族の心を揺さぶり心に響き共鳴することでしょう。
また、この付言事項が無用なトラブルを防止する強い効力を発揮することでしょう。

5.遺言の方式

遺言の方式は、大きく分けて普通方式と特別方式があります。

特別方式は船舶などの遭難で遺言者に危難が迫っている場合など
特殊な状況下でなされるものですから、通常は普通方式により作成することになります。

普通方式は①自筆証書遺言と②公正証書遺言と③秘密証書遺言の3つですが、
一般的なのは①自筆証書遺言と②公正証書遺言になりますので、ここではこの2つに絞ってご説明いたします。

① 自筆証書遺言

遺言者が自分で書いて作成する遺言です。
紙とペンと印鑑さえあれば思い立った時にいつでも作成できます。

最初から最後まで他人が関与しませんので内容はもちろん、その存在も秘密にしておけます。
家族の状況や考えが変わったらいつでも変更ができます。

具体的作成要件

(ⅰ)全文を自書する

全文を遺言者本人が手書きしなければなりません。
ワープロや代筆は無効となります。

また、夫婦が2人共同で作成することは無効の原因となりますので、一人ずつ作成してください。

(ⅱ)日付を自書する

日付も手書きです。そして、遺言の日付は年月日が特定できるようにします。制作年月日のない遺言は無効です。

「○年○月○日」と記載するのが一般的です。「○年○月吉日」とした遺言は無効です。

(ⅲ)氏名を自書する

氏名は、戸籍どおりにフルネームで書くのが無難です。

(ⅳ)押印をする

押印に用いる印鑑は実印に限らず認印や拇印でもかまいませんが、
本人の印鑑であることを証明するには実印が一番です。

その他注意点

・用紙や筆記具は自由です
・封筒に入れ封印する(法律上は問題ではありませんが改変を防ぐためです。)

自筆証書遺言メリット・デメリット

メリット

・一人で手軽に作成できる
・ほとんど費用が掛からない
・遺言の存在や内容を秘密にできる

デメリット

・形式や内容の不備により無効になるおそれがある
・偽造、変造がされやすい
・遺言書が発見されなかったり、隠匿されたりするおそれがある
・裁判所の検認が必要なので、遺言執行までに手間と時間がかかる

② 公正証書遺言

公正証書遺言は公証人によって作成され、公文書として公証役場に保管されます。
最も確実で安全な遺言の方法です。

遺言者は遺言したい内容を公証人に伝えればよく、あとは公証人が法的にきちんと整理された
遺言を作成してくれます。(遺言の原案は本人が事前に作成なければなりません)

公正証書流れ

①遺言の原案を考える

あらかじめ遺言の内容を記載したもの(メモ等で簡単なもので結構です)

(必要資料)

(ⅰ)遺言者の印鑑証明(発行後6カ月以内のもの)1通
(ⅱ)遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本・除籍謄本等
(ⅲ)相続人以外の人に財産を遺贈する場合には、その人の住民票等
(ⅳ)相続財産が不動産の場合には、土地・建物の登記簿謄本及び固定資産評価証明書
(ⅴ)相続財産が不動産以外の場合には、預金通帳、株券等

②証人を決める

証人になってくれる人2人以上に依頼し了承を得ておく。(ここで証人になってくれる方の住所
・氏名・生年月日・職業がわかるメモが必要です。)

ただし、次の者は証人になれません。
未成年者、推定相続人、受遺者並びに推定相続人と受遺者の配偶者及び直系血族。

③公証役場に出向いて依頼、打ち合わせ

遺言の相談から作成まで、日数を要することがありますので、
あらかじめ、日時などを公証人と打ち合わせしておくとすべての面で好都合です。。

④遺言書の文案チェック

公証人が事前に遺言内容をチェックしてくれます。

⑤証人2人とともに公証役場に出向く

(ⅰ)事前に作成された遺言の内容を、公証人が遺言者と証人に読み聞かせます。
(ⅱ)遺言者と証人は署名押印します。
(ⅲ)公証人が署名押印します。
※遺言者は実印、証人は認印を当日持参します。

⑥公正遺言証書の完成

※この他、遺言執行者(遺言を実行してくれる人)を決めておくと便利です。
※手数料は相続財産がどの程度あるか、また、遺言によって財産を受け取れる方が何人いるのかの
条件によって異なってきます。詳しいことはご相談ください。

公正証書遺言メリット・デメリット

メリット

・形式や内容の不備で無効になるおそれがない
・偽造、変造、隠匿のおそれがない
・検認が不要なので、相続人などがすぐに開封して遺言を執行できる
・字の書けない人でも作成できる

デメリット

・証人とともに公証役場に行く手間がかかる
・ある程度の費用がかかる